彼女が入院して、早1か月半が経つ。彼女は京都出身のかわいいおばあちゃんで、手術後いろいろあって安静を保つためにベッド上の生活、つまり一切歩くことができなくなってしまった。私だったら1ヶ月半もベッドの中に閉じ込められていたら辛くてどうしようもなくなりそうなのに、(まぁ現に彼女も精神的に大変なことになったのだけど)、体をきれいにしてあげたあとは必ず「おおきに」って笑顔で言ってくれる、そんな人だった。1か月半がたった頃、やっと再手術ができるかもしれない、それが終わればリハビリして歩けるようになるということで、本人も家族もスタッフも喜んでいた矢先、今度は予期せぬことが起こり、急に意識が無くなってしまった。手を握っても握り返してくれないし、名前を呼んでも目を開けてはくれない。もしかしたら数日が峠になるかもしれない、そんな話さえ聞かれていた。家族はもちろん、私たちもショックを受けていたけれど、毎日声をかけて、できる限りのことをしてきた。

意識を失ってから1週間経った今日、彼女は初めて眼を開けた。「手を握って」と言うとかぼそい力で握り返してくれた。「わかる?聞こえる?」と聞くとゆっくりと微かに頷いた。何よりもそれが嬉しくて、感動のあまり涙すら出そうになりながら、家族や先生と一緒に喜びを分かち合った。なんだかドラマで起こる奇跡みたいな瞬間だった。きっと本人の生きる力と、家族の願いが伝わったのだと思う。本当に本当に良かった。もちろんこれで全てが良くなるわけじゃないけど、まずは希望の光が見えてきた。