またひとつ、命とのお別れ。


その人の奥さんは、もう先が長くないと分かったときから献身的に1ヶ月間付き添っていた。先週には「これ以上長引くなら、もう楽にさせてあげたいわね」と悲しそうに、だけど涙のにじんだ優しい目で微笑むように言っていた。手を握って、頬に触れて、「まだこっちの言ってることがわかるみたい!」と時折笑顔を見せながら。あんなに奥さんに愛されて最期を迎えたあの人は、きっと幸せだったんだろう。「本当にみなさんには良くしてもらいました。ありがとうございました。」と深々と頭を下げる奥さんの姿に、仕事中だったけれど涙がこぼれた。理想的な最期を見たような気がした。


あたしもいつか、そんな微笑ましい夫婦になれるかな。